加齢に伴って、骨盤は動きにくくなっていく
- 聡範 藤原

- 4月7日
- 読了時間: 6分

「最近、なんか歩くのが疲れる」「足が上がりにくくなった気がする」
そんな変化、感じていませんか?
その原因のひとつが、年齢とともに骨盤が動きにくくなることです。今回は骨盤・歩行・筋力の関係を、研究データをもとにわかりやすく解説します。
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年をとると歩けなくなる、その流れ
加齢による歩行困難は、次のような流れで進んでいきます。
① 年をとると、体が全体的に硬くなる
② 骨盤が動きにくくなる
③ 歩き方が変わってくる(歩幅が狭くなる・ふらつく・すり足になる)
④ 歩かなくなるので、さらに筋肉が落ちる
⑤ 歩くのが本当につらくなる(転倒・介護リスクが上がる)
一つひとつのステップをくわしく見ていきましょう。
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そもそも、骨盤ってどんな動きをしているの?
「歩く」という動作は、足だけでやっているわけではありません。
実は一歩踏み出すたびに、骨盤も一緒に動いています。
右足を前に出すとき、骨盤は右側が前に出るようにくるっとひねられ、左右にも揺れ、前後にも傾きます。
この骨盤の動きがあることで、体の揺れが小さくなり、エネルギーをあまり使わずにスムーズに前へ進めるのです。
骨盤が動かなくなると、歩くたびに体が大きく左右に揺れるようになり、それだけで疲れやすくなります。
研究データより|高齢者(平均73歳・21名)の歩行を精密な動作解析装置で調べた研究では、高齢になるほど歩くスピードが落ちるだけでなく、骨盤のひねり動作が小さくなり、体が左右にふらつくようになることが確認されています。
出典:CiNii Research「高齢者における歩行時の速度変化が骨盤および体幹回旋運動に及ぼす影響」
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なぜ、年をとると骨盤が動きにくくなるの?
骨盤が動きにくくなる一番の原因は、体全体の「かたさ」が増していくからです。
若いころは関節のクッション(軟骨)がしっかりしていて、関節まわりの組織も柔らかく弾力があります。
ところが年を重ねるにつれて、このクッションがすり減り、まわりの組織が硬く・もろくなっていきます。
その結果、関節が思うように動かせなくなっていくのです。
研究データより|医学の教科書的存在であるMSDマニュアル(老年医学)には、加齢に伴う歩行の変化として「骨盤の動きはあらゆる方向で小さくなる」と明記されています。
出典:MSD Manuals Professional「高齢者の歩行障害」
また、お腹まわりの筋肉が弱くなり、太もも前側の筋肉が縮んでかたくなると、骨盤が前に傾いた「反り腰」の姿勢になりやすくなります。
この姿勢になると、骨盤はさらに動かしにくくなります。
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骨盤が動かないと、どんな歩き方になるの?
骨盤の動きが小さくなると、歩き方にこんな変化が現れます。
歩幅が狭くなる
骨盤が動かないと股関節も大きく動かせないため、足を前に大きく踏み出せなくなります。小股でちょこちょこした歩き方になっていくのはこのためです。
ふらつきやすくなる
歩くとき体を支えるお尻の筋肉が弱くなると、片足で立つ瞬間に骨盤がガクッと落ちて体が横に揺れてしまいます。
これが「よたよた歩き」の正体のひとつです。
研究データより|2,131名の成人を対象にした研究では、年齢とともに「足を横に開く力(お尻の外側の筋力)」が特に大きく落ちることがわかりました。
この筋力の低下が、歩行中の左右のふらつきや外出の減少につながるとされています。
出典:理学療法学 第48巻第4号(池添冬芽ほか)
研究データより|高齢者は歩くとき「両足が同時に地面についている時間」が若者の約1.5倍になることが報告されています(若者:約18% → 高齢者:26%以上)。
これは体がふらつくのを防ぐための自然な反応ですが、その分一歩一歩が小さくなり、歩くのが遅くなります。
出典:MSD Manuals Home「高齢者の歩行障害」
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歩かなくなると、さらに筋肉が落ちていく
歩くのが不安定でつらくなると、人は自然と外出を減らし、座っている時間が増えます。そしてここから、怖い「負のスパイラル」が始まります。
歩くのがつらい → あまり動かなくなる → 筋肉がどんどん落ちる → さらに歩けなくなる → もっと動かなくなる・・・
筋肉は使わないと、あっという間に細くなっていきます。
特に落ちやすいのが「姿勢を保つために使う筋肉」——お尻・太もも・お腹まわりです。
これらは、立ったり歩いたりするときに体を支える大事な役割を担っています。
研究データより|160名(20〜80歳代)をMRIで調べた研究では、太ももを前に振り出す筋肉(腸腰筋)の大きさが、70歳代では20歳代に比べて約40%も減少していることが明らかになりました。
この筋肉が小さくなるほど、歩くスピードも落ちることが示されています。
出典:体力科学 49巻5号(金俊東ほか)
研究データより|筋力は20〜30代がピークで、50代から低下のペースが上がります。
80代までに約30〜50%も低下するといわれており、特に「立ち上がる・段差を上る」といった瞬発力を使う動作から難しくなっていきます。
出典:理学療法学 第48巻第4号;健康長寿ネット「運動機能の老化」
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最終的に、「歩けない」に近づいていく
このスパイラルが続くと、医学的には「サルコペニア(筋肉が少なくなった状態)」や「フレイル(心身ともに弱ってきた状態)」と呼ばれる段階に入っていきます。
難しい言葉ですが、要は「転びやすくなったり、介護が必要になるリスクが高まった状態」のことです。
転倒して骨折 → 入院・寝たきり → さらに筋肉が落ちる、という流れで一気に悪化するケースも多く、「歩く力」を守ることは、健康寿命に直結する問題です。
研究データより|国立長寿医療研究センターの調査によると、65歳以上になると歩くスピードは少しずつ落ちはじめ、男性では80歳以降、女性では75歳以降から日常生活に支障が出るとされています。
また、75歳以降で歩くのが遅い人は、速い人に比べて10年以上も早く亡くなるというデータもあります。
出典:健康長寿ネット「高齢者の歩行能力と病気の関連」
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まとめ:骨盤を動かす習慣が、将来の「歩く力」を守る
年をとるにつれて骨盤が動きにくくなるのは、ある程度は仕方のないことです。
でも、そのスピードは日々の習慣でかなり変わります。
ウォーキング、股関節のストレッチ、お尻まわりの筋トレ——こういった「骨盤を動かす習慣」を早めに始めることが、元気に歩き続けるための一番の近道です。
「老化は足から」なんていいますが、もっと正確にいえば「老化は骨盤から」かもしれません。毎日の生活の中で、少しだけ骨盤を意識して動かしてみてください。
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