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胸を張って肩甲骨を寄せる姿勢、本当に身体にいいですか?

―「良い姿勢」の思い込みが、不調をつくっているかもしれません―


「姿勢を良くしようと思って、胸を張って肩甲骨を寄せています」


これは、とてもよく聞く言葉です。


学校や部活動、健康指導などで、一度は教わったことがある方も多いのではないでしょうか。


確かに、胸を張り、背筋を伸ばす姿勢は、見た目が良く、「ちゃんとしている」「良い姿勢」に見えます。


ですが実は、その“頑張った姿勢”が、身体にとって負担になっているケースは、決して少なくありません。


背骨は「固定」するための構造ではありません


まず知っておいてほしいのは、背骨は「まっすぐに固めて支えるための構造」ではない、ということです。


背骨は、首から腰まで、複数の小さな骨が連なってできています。


この構造によって、前後に曲がる左右に倒れるひねるといった動きが組み合わさり、日常動作を無理なく支えています。


歩く、しゃがむ、立ち上がる、振り向く。


これらの動作は、背骨が部分ごとにしなやかに動くことで成り立っているのです。


胸を張りすぎると、背骨の動きはどうなる?


胸を張り、肩甲骨を強く寄せた姿勢を続けると、背中の中央にある「胸の背骨(胸椎)」の動きが制限されやすくなります。


胸椎は、本来、身体をひねったり、衝撃を分散したりする大切な役割を持っています。


しかし、胸を張って固定し続けると、この部分の動きが小さくなり、代わりに 首や腰が無理に動こうとする 状態になります。


その結果、・首が張る・肩がこる・腰が重くなるといった不調につながることがあります。


「良い姿勢」を頑張るほど疲れる理由


「姿勢を意識すると、すぐ疲れる」「頑張らないと姿勢を保てない」


こうした感覚がある場合、それは姿勢が悪いのではなく、姿勢を“作りすぎている”可能性があります。


胸を張りすぎた姿勢では、肋骨が持ち上がり、呼吸が浅くなりやすくなります。


呼吸が浅くなると、身体は無意識に緊張状態になり、肩や背中、腰に力が入り続けます。


その状態で日常生活を送れば、「疲れやすい」「こりやすい」と感じるのは自然なことです。


肩甲骨は「寄せる」より「動ける」ことが大切


肩甲骨は、常に寄せて固定するための骨ではありません。


腕を前に伸ばす物を持ち上げる洗濯物を干す


こうした動作の中で、肩甲骨は前後・上下・回旋と、大きく動きながら働いています。


肩甲骨を常に寄せる意識が強すぎると、この自由な動きが制限され、肩や首に余計な負担がかかることがあります。


自然な姿勢とは「力を入れない姿勢」


本当に身体にとって楽な姿勢は、胸を張って頑張る姿勢ではありません。


・力を入れなくても立てる

・呼吸が自然にできる

・動き出しがスムーズ


こうした状態が、結果として「良い姿勢」に見えるだけなのです。


姿勢は、意識して作るものではなく、背骨や肩甲骨が自然に動ける状態の“結果”として表れます。


図解で見てみると分かりやすい違い

※イメージになります。

胸を張って肩甲骨を寄せた姿勢では、 背骨の動きが制限され、首や腰が代わりに頑張りやすくなります。  一方で、背骨と肩甲骨が自然に動ける姿勢では、 力を入れなくても立ちやすく、呼吸もスムーズになります。  「姿勢を良くしよう」と頑張っているのに疲れる場合、 姿勢そのものではなく、背骨の動きを邪魔していないか 見直すことが大切です。

  • 左:胸を張り、肩甲骨を寄せすぎた姿勢

  • 右:背骨と肩甲骨が自然に動ける姿勢


図で見ると、「どこに力が入っているか」「どこが動きを邪魔されているか」がイメージしやすくなります。


もし、こんな感覚があれば見直しのサイン


・姿勢を意識すると疲れる

・胸を張るほど肩がこる

・深呼吸がしにくい

・首や腰が張りやすい


これらは、「良い姿勢」だと思って続けていることが、身体の動きを邪魔しているサインかもしれません。


背骨は「整える」より「邪魔しない」


背骨を整えるというと、鍛える、伸ばす、固める、といったイメージを持たれがちです。


ですが実際には、背骨の動きを邪魔しているものを減らすことがとても重要です。


無理に胸を張っていないか。


肩甲骨を固めすぎていないか。


こうした視点で身体を見直すだけでも、動きやすさは大きく変わります。


最後に


姿勢は、「頑張るもの」ではありません。


背骨が自然に動き、呼吸がしやすく、身体が無理なく使える。


その状態こそが、身体にとって本当に良い姿勢です。


もし今、姿勢を意識するほど疲れたり、不調を感じたりしているなら、一度、背骨と肩甲骨の動きを見直してみてください。


 
 
 

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