胸を張って肩甲骨を寄せる姿勢、本当に身体にいいですか?
- 聡範 藤原

- 1 日前
- 読了時間: 4分
―「良い姿勢」の思い込みが、不調をつくっているかもしれません―
「姿勢を良くしようと思って、胸を張って肩甲骨を寄せています」
これは、とてもよく聞く言葉です。
学校や部活動、健康指導などで、一度は教わったことがある方も多いのではないでしょうか。
確かに、胸を張り、背筋を伸ばす姿勢は、見た目が良く、「ちゃんとしている」「良い姿勢」に見えます。
ですが実は、その“頑張った姿勢”が、身体にとって負担になっているケースは、決して少なくありません。
背骨は「固定」するための構造ではありません
まず知っておいてほしいのは、背骨は「まっすぐに固めて支えるための構造」ではない、ということです。
背骨は、首から腰まで、複数の小さな骨が連なってできています。
この構造によって、前後に曲がる左右に倒れるひねるといった動きが組み合わさり、日常動作を無理なく支えています。
歩く、しゃがむ、立ち上がる、振り向く。
これらの動作は、背骨が部分ごとにしなやかに動くことで成り立っているのです。
胸を張りすぎると、背骨の動きはどうなる?
胸を張り、肩甲骨を強く寄せた姿勢を続けると、背中の中央にある「胸の背骨(胸椎)」の動きが制限されやすくなります。
胸椎は、本来、身体をひねったり、衝撃を分散したりする大切な役割を持っています。
しかし、胸を張って固定し続けると、この部分の動きが小さくなり、代わりに 首や腰が無理に動こうとする 状態になります。
その結果、・首が張る・肩がこる・腰が重くなるといった不調につながることがあります。
「良い姿勢」を頑張るほど疲れる理由
「姿勢を意識すると、すぐ疲れる」「頑張らないと姿勢を保てない」
こうした感覚がある場合、それは姿勢が悪いのではなく、姿勢を“作りすぎている”可能性があります。
胸を張りすぎた姿勢では、肋骨が持ち上がり、呼吸が浅くなりやすくなります。
呼吸が浅くなると、身体は無意識に緊張状態になり、肩や背中、腰に力が入り続けます。
その状態で日常生活を送れば、「疲れやすい」「こりやすい」と感じるのは自然なことです。
肩甲骨は「寄せる」より「動ける」ことが大切
肩甲骨は、常に寄せて固定するための骨ではありません。
腕を前に伸ばす物を持ち上げる洗濯物を干す
こうした動作の中で、肩甲骨は前後・上下・回旋と、大きく動きながら働いています。
肩甲骨を常に寄せる意識が強すぎると、この自由な動きが制限され、肩や首に余計な負担がかかることがあります。
自然な姿勢とは「力を入れない姿勢」
本当に身体にとって楽な姿勢は、胸を張って頑張る姿勢ではありません。
・力を入れなくても立てる
・呼吸が自然にできる
・動き出しがスムーズ
こうした状態が、結果として「良い姿勢」に見えるだけなのです。
姿勢は、意識して作るものではなく、背骨や肩甲骨が自然に動ける状態の“結果”として表れます。
図解で見てみると分かりやすい違い
※イメージになります。

左:胸を張り、肩甲骨を寄せすぎた姿勢
右:背骨と肩甲骨が自然に動ける姿勢
図で見ると、「どこに力が入っているか」「どこが動きを邪魔されているか」がイメージしやすくなります。
もし、こんな感覚があれば見直しのサイン
・姿勢を意識すると疲れる
・胸を張るほど肩がこる
・深呼吸がしにくい
・首や腰が張りやすい
これらは、「良い姿勢」だと思って続けていることが、身体の動きを邪魔しているサインかもしれません。
背骨は「整える」より「邪魔しない」
背骨を整えるというと、鍛える、伸ばす、固める、といったイメージを持たれがちです。
ですが実際には、背骨の動きを邪魔しているものを減らすことがとても重要です。
無理に胸を張っていないか。
肩甲骨を固めすぎていないか。
こうした視点で身体を見直すだけでも、動きやすさは大きく変わります。
最後に
姿勢は、「頑張るもの」ではありません。
背骨が自然に動き、呼吸がしやすく、身体が無理なく使える。
その状態こそが、身体にとって本当に良い姿勢です。
もし今、姿勢を意識するほど疲れたり、不調を感じたりしているなら、一度、背骨と肩甲骨の動きを見直してみてください。



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